ラシャードの世界――
今より数えて2000年の昔、世界は混沌に包まれ、闇色の髪と、血の色の瞳を持った暗黒神ガナーンの統治により、
生き物全ては昼なお暗い世界にあって、闇の生物のみが自由に飛びまわり、
他の生物は毎日を絶望と悲しみとで過ごしていた。
そこへ、世界の中心、聖地ファラムーンへと美しい一人の女神が降り立った――その名は、大地の女神フレスナージュ。
かの女神司る『光』の力により、ガナーンの闇の力は地界へと押し封じ込められて、
大地は陽の光を浴び、生きとし生けるものすべてがその輝きと優しさに包まれていった。
女神の慈愛を受けた大地は肥え、光は人々を暖かく照らし、野には花が咲き、やがて『人間』を生み出した。
他の生き物と比べて力の弱い『人間』は、女神より授かった『知性』を持って、やがてこの地――アズル大陸を
統括し、その敬虔な秩序により、世は平穏を保っていた…。
――これは、そんな神話に基づいたアズル大陸一の国家、ソルテス王国第二王子、レオンの物語です。
この世界は剣と魔法の世界です。
ただし、『魔法』はごくごく一部の選ばれた人間にしか扱えないものとして認知されています。
上記神話の元に、世界の殆どが『大地の女神(大地母神)フレスナージュ』信仰です。
女神が降臨したとされる聖地ファラムーンは海中に沈んだとされ、現在は存在しません。
聖地が何故海中に沈んでしまったのかは定かではありませんが、その土地に存在した、
神聖なる神官の国にして世界の統一国家であったファラムーン、その使命と血は最北西にある
『神聖国ファラセル』の王家が受け継いでいると言われ、その血脈の人々は癒しの神聖魔法を自在に
行使できると言われています。
主人公、レオンの生まれたソルテス王国は、この世界で一番の大国です。
神聖国ファラセルと縁深きこの国は、ファラセルより招いた『最高神官』と呼ばれる神聖魔法の最高の使い手を
国の護りの力とし、戦の際にはその魔法力で国の廻りや兵士達、ありとあらゆる防御と護りを施していたのと、
山と海とに囲まれた自然の要塞、難攻不落の無敵とされていました。
『自然の要塞』は、国内における農作物の不作をももたらしましたが、その貧困な土地は
最高神官の『癒し』の力により、一変して豊潤な大地へと変わりました。
しかして中立平和を絶対とするファラセルの意向に、事実上『護り』の力を一任していたソルテスは
ファラセルのその強い要望に背く事は敵わず、その助力を頂く変わりに、世の平安を取りまとめる役目を担う事となりました。
時の国王であり、レオンの父でもあるファウスト=ディア王は、ファラセルとの友好と、世の平安を取りまとめる証として、
ファラセルの女王の妹姫を娶りました。
そして最高神官の力によって国内も神聖な力に護られて、人々は幸せに暮らしていました。
やがて。二人の間には二人の王子が生まれます。
第一王子の名は、ラヴァル=ミア。
最高神官アルファー=ルナの側近、セイドリックに師事し、魔法力に長けた天才の誉れも高い少年。
第二王子の名は、レオン=リア。
時の親衛隊長ウィルナードに師事する、剣の資質に優れた真っ直ぐな少年。
――そして、物語は始まります。
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