011.冬の星座
「あ、流れ星!」
そう言ってトリスが振り返ると、後ろについて歩いていたシャムロックが、その長身をめぐらせて空を見上げた。
流れ星の速さは、言われてから探すのでは間に合わない。
分かっていたはずなのに、思わず振り返ってしまったコトをトリスは少しだけ後悔した。
きっと彼は、自分が悪いわけでもないのに謝ってしまうだろうから。
「…ごめん、見逃してしまった」
案の定、困ったように笑う彼を見て、トリスが苦笑しながら首をかしげた。
「ううん、あたしこそごめん。言ったところで直ぐ見つけられないよね。シャムロックが謝ることじゃないわ」
「でも、せっかく言ってくれたのに…」
そう言って、シャムロックが申し訳なさそうな顔になる。
自分が悪いわけではないのに、謝ってしまう性質はキライではないけれど。
この人はこれで本当に騎士をやってこれたのだろうかと、たまに心配になるときがある。
「トリスは、星が好きなのかな」
「なんで?」
「いや、良く夜空を見上げているから」
微笑む顔は、何より優しい。
そんな瞳で真っ直ぐ見つめられたら、困っちゃうじゃない。
トリスは心の奥でそう言いながら、その視線に気がつかなかったふりをして空を見上げた。
「うん、好きよ。でも、夏より冬の方が好き」
「どうして?」
「空気が澄んで、星がきれいに見えるから。そうしたらきっと、流れ星だってたくさん見つけられるわよ」
「私でも?」
「勿論!」
「教えてくれるのかい?」
「当然でしょ?」
思わずにっこり笑って、見返すと。
そこには同じように笑ったシャムロックの顔があった。
お互い視線を交わして、なんとなく照れくさくなって、少しだけ赤くなって、そしてまた―――微笑った。
「どんな星座があるのかな」
「冬は星もキレイに見えるし、見つけやすいから教えやすいと思う」
「じゃあ、冬になったらまた…ね」
そしてどちらかとも無く差し出された手と手が、重なって。
ゆっくりと歩き出した二人の頭上で、冬を待ちきれない流れ星が一つ、空を翔けた。
Fin
短めですが、ちょっとしたスキンシップをば。(笑)
2005.07.26
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